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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第74章 惑乱


「入院……っ!? っ、あちっ」

その不穏な単語に思わず身を乗り出してしまい、暴走してコントロールを失った手が湯呑みを倒してしまった。

「あらあら、大丈夫!? 火傷はしていない?」

「す、スンマセン!」

お祖母さんが台所から持って来てくれた台拭きで、あわてて机を拭いた。

……入院?

「にゅ、入院って、事故、病気スか、なんで」

ああ、うまく口が回らない。
まさか。
想像していた中で最悪の事態。

「そ、それで、みわは?」

「……どうして、あの子ばかりこんな……」

そう言って俯き、お祖母さんは……泣いていた。

足下に、ぽっかりと穴が開いたみたいだ。

まるで、みわが刺されたあの時に逆戻りしてしまったかのように、肌が粟立つ。

お祖母さんは、それ以上話してくれなかった。

みわは、命に関わる状態ではないと。
明日、面会時間に病院に行こうと。
お祖母さんもまだ、こころの整理がついていないから、うまく話せそうにないと。

結局、オレもなんだか意識がふわふわとしていて……無事に帰り着ける気がしなかったから、今日は泊まらせてもらう事にした。


客用布団を用意するかと問われ、申し訳ないが今日はみわの布団で眠りたいと申し出た。

とても、眠れる気がしない。
不安ばかりがまとわりついて。

みわの布団に入ると、すぐそこに彼女がいるような錯覚に陥る。

あったかい、あの微笑み。
甘い甘い、彼女との時間。

「みわ……何が、あったんスか」

自分と天井の間にある空間にそう問うても、返事が返ってくるわけがない。

時差でぼんやりする頭をなんとか働かせて、あれやこれやと思いを巡らせるが、どれもうまくいかなかった。



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