第73章 散華
周りにいたグレーストライプのスーツを着た男が懐からナイフを取り出し、私の服を切り裂き始めた。
「ぅ……んんぐ……」
身じろぐが、大きな収穫は得られない。
「動いたら痛い思いをする事になるぞ」
その冷たい声とともに頬に添えられたのは、見た事も無い、刃先の大きなナイフ。
"殺される"そう思った。
こんな奴らに好き放題されるくらいなら死んでやる、そう思った筈なのに、目の前に突然現れた"死"の恐怖に、私は完全に呑まれていた。
セーター、スカート。
キャミソールにブラジャー。
すでに脱がされていたショーツ以外の衣類という衣類を、次々と、切り裂いていった。
物凄い力だ。服がまるで、ボロ布のような無残な状態になっている。
布が裂ける音だけが、室内に響く。
こわい、こわい
衣類は全て裂かれ、私の身体を纏うものは膝上までの靴下と、ハイカットのスニーカーのみとなった。
涼太に選んで貰った、靴だ。
「お、いいカッコだぞ。
陵辱モノの定番って感じで」
ヒューッと、囃し立てるように聞こえる口笛。
「スッポンポンじゃ、逃げるに逃げらんねえなあ」
周りにいる男たちからも上がる笑い声。
なんで笑っているの?
何が可笑しいの?
何が、楽しいの?
現実を受け止められずに惚けていると、何やら、紐のような縄のようなもので両手首を拘束された。
動かすと、皮膚に食い込んで激痛が走る。
「ゔぅ」
「亀甲縛りにしないだけありがたく思えよぉ〜?」
ギャハハハと、また下品に笑う声。
頬を、固くささくれ立ったような紐がピシリと打った。
「ほら、足開け」
"ボス"の、背筋が凍るような凄みのある声。
後ろには、撮影機器のようなものを構えた男。
まるで、奴隷にでもなったみたい。
実際、彼らは私の事をその程度にしか思っていないんだろう。
これから、人間以下の扱いをされるんだ。