第73章 散華
ああ、切られたのが涼太に買って貰った服じゃなくて、良かった。
麻痺した頭はそんな事を考え、男の手が私の身体に触れる頃には、あまりの恐怖に何も考えられなくなっていた。
なに、なんでこのひとは
こんなことをするの?
さわらないで
「どうせ今日びの女子高生はヤリまくってんだろ?」
いやだ
どうして
りょうた
「お、使い込んでる割に、ここはキレイな色してんじゃねえか」
いや
さわらないで
やめて
「ま、オンナなんか、1回ヤッちまえばもう中古品だ。新品以外に価値なんかねえんだよ」
たすけて
りょうた
りょうた
「……へへ、好きな男の事でも思い浮かべて大人しくしてりゃ、悪いようにはしないぜ? ほれ、そのまま足広げてろよ、中古女」
いや
やだ
やめて
はなして
いたい
いたい
いた い
声にならない声が、喉元で音を無くしてさらさらと消えていく。
これから複数の男たちに蹂躙されるであろう自分の哀れな姿を、もうひとりの私が遠くから眺めているような感覚だった。
こうしてまた
全部
奪われて
いくんだ
ジタバタと手足をもがく様に動かすと、腹部に強烈な痛みを感じた。
殴られたのか、蹴られたのか、踏まれたのか。
頬にもまた、鈍い痛み。
響き渡る、笑い声。
もう、視覚は麻痺していた。
なんにも、見えない。
脳が、拒否している。
ぼんやりとする視界の中。
1人の男が、私の両足の間で下半身を露出させているのが分かった。
他に、1、2、3、4……
何人いるか分からない複数の男が、私の手足や顔を押さえたり、撮影機器のようなものをこちらに向けている。
ふと、頭の中にフラッシュバックのように映像が流れてくる。
この状態、私……以前に経験がある。
同時に何人もの男に、ぐちゃぐちゃに犯された記憶。
犯され、嬲られ、ぼろ雑巾のようになった自分の姿。
これは遠い記憶なのか、今起こっている現実なのか、それを判別する能力はもはや今、なかった。