第73章 散華
「おいっ!!」
突然の怒号に、私も男もビクリと身体を震わせた。
数人の足音。
一瞬、助けを期待してしまった。
でも。
「お前、もう1人の女はどうした!」
男の仲間だ。
私の足の間に身を埋め、腰を沈めようとしていた男は慌ててファスナーを上げ、どうやら彼の上司らしき男の所へ駆け寄った。
「あっ、え……いや、もう1人は1階へ下りて行ったので、ボスが既に捕まえたのかと……」
「エレベーター前と非常階段前で待っててやったのに、ちっとも姿を現さねえ! どこに逃がした! てめえもグルか!?」
「ちっ、違いま……っ!」
男の弁解も空しく、"ボス"と呼ばれていた黒サングラスに、じゃらりと金のネックレスをつけた白スーツの男は彼を殴り飛ばした。
決して軽くないスーツ男はいとも簡単に吹き飛び、壁にその身体を叩きつけられてグッタリとしている。
背中を冷たい汗が伝った。
あの男にだって全く抵抗出来なかったのに、この人はもっと……上だ。
脱がされたショーツをすぐに履きたいのに、ソファに投げ出された身体は、ピクリとも動かない。
「ふぅん、このお嬢さんが、もう1人を逃がしてあげたってわけか……美しい自己犠牲だネェ」
先の尖った革靴を鳴らして近付いてくると、私の頬に触れ、眉を歪ませた。
「お前、売り物に傷つけてんじゃねえ!」
"ボス"は壁際でのびている男に追加の蹴りを入れ、彼は呻いて蹲った。
「ま、仕方ねえな、デビュー作はレイプものにすっか」
そう言いながら、"ボス"は私のスカートをめくり、何も纏っていないソコを見つめ、ニヤリと口元を緩めた。
こんな、こんな奴らに犯されるくらいなら、……死んだ方が……
「舌でも噛まれたら面倒だ。口になんか突っ込んどけ」
「あぐっ」
抵抗する間も無く、口に乾いた雑巾を詰め込まれ、舌を噛む事も、声を上げることすら出来ない。
鼻をつく悪臭に、吐きそうになる。
「おい、剥け」
それは、地獄への号令。