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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


何が、起きたのか。

異様にゆっくり昇っていく、エレベーター。

かご室の中には、スズさんと私の他に、スーツ姿の男性が2人。

もう1人はどこに潜んでいたのか……いや、もしかしたら私たちがあのビルの前に着いた瞬間から、目をつけられていたのかもしれないけれども。

エレベーターというものは、ロープを使って昇降させているんだというのを再認識させられるような、金属が擦れる音を響かせながら、ギシギシと揺れつつ、上昇を続ける。

病院とか、高齢者が多く利用する場所にあるような、速度の遅いエレベーター。

まるで、絞首台へ向かう囚人になった気持ちだなんて……そんな事を考える余裕が、どこにあるんだろう。

あまりの突然の展開に、マトモな思考回路ではなくなっている。

「……先輩」

「ねえ、これ……」

どういうこと? までは声にならなかった。
男たちの、背中から漂う雰囲気に圧倒されてしまったのだ。

……怖い。
何が、起きているの。

私もスズさんも、男たちも一言も発することなく、エレベーターは8階で上昇を止めた。

エレベーターのドアは、古いからなのか故障寸前なのか、元々そういう造りなのか、一度半分だけ開き、ガタンと音がして残りの半分が開くというものだった。
急いでいたら、誤って激突してしまいそう。

私たちはそれぞれ、男たちに手首を掴まれて歩き出した。

薄暗いエレベーターホール。目の前にはすりガラスのついたドア。
ガラスの部分には、会社名が書かれたプレートが付けられている。

さっきも地上で看板を見た時にも思ったけれど、見た記憶のない会社名だ。
なんの、会社だろう。

開けられたドアの向こう側は、それほど広くない空間だった。

見渡すと、大きな机……テレビドラマでオフィスの場面などでよく見る事務机……が4台、2台ずつ向かい合うかたちに置かれている。

後は、正面を向いてその机たちを見渡せる位置にある1台。

右手奥には衝立があり、私たちはそこへ連れて行かれた。

衝立の裏側には、向かい合わせになっている黒い革張りの3人掛けのソファに、ガラステーブルが設置されていて。

男たちは私たち2人を座らせ、衝立の向こう側へ消えていった。




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