• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華



スズさんに連れられて来たのは、横浜駅を少し離れた場所にある、9階建ての雑居ビル。

ゲームセンターやファストフード店、ドラッグストアなども立ち並ぶ、人通りの多い道だ。

現に今も、女子高生数人とすれ違ったし、外国人観光客の姿も多い。

でもこの辺りの建物は古いものばかりで、建物自体も看板や窓も薄汚れている。

スズさんには似合わない場所だなあ、そんな第一印象だった。

「……ここ?」

入り口にある看板でテナントを確認すると、9階は名前も知らないエステサロン、8階・6階・5階には一般企業と思われる会社名。

7階と4階には……ヘアサロンと書いてあるから、美容院があるみたい。

1階から3階までは、ゲームセンターになっている。そんなビル。

「スズさん、どこのお店に用があるの?」

ゲームセンター? で遊びたい……ようには見えないし、美容院?
まさか、エステサロン?
でも、こんなに悩むのって、どうして……

「……」

スズさんは、また俯いて立ち止まってしまった。

「……スズ、さん?」

やっぱりなんかおかしい。
こんなざわついた所よりも、家に呼んだ方が良かったのかもしれない。

「スズさん、大丈夫? 一旦、静かな所でお話聞こうか?」

少し間が空いて、スズさんは勢い良く顔を上げた。

「神崎せんぱいっ! 私、やっぱりダメです! 帰りましょう!」

「……え?」

その表情は、焦り、戸惑い、不安……いや、恐怖?

「わ、分かった、とにかく帰ろう」

スズさんのその様子に、ただならぬものを感じて、彼女の手を引いて踵を返した。


……瞬間、何かにぶつかった。

人……スーツ姿の、男性だ。

「すっ、すみません!」

焦りすぎて、後ろに人がいるのを確認しなかった。
深々と頭を下げて、避けるように歩き始めると……左腕に、掴まれたような感覚。

「スズちゃん、この子が前に言ってた子? 清純派って感じで、良さそうじゃねえか」

男性の口からスズさんの名前が出た事に驚いている内に、気付けば私たちはビルのエレベーターに押し込まれていた。






/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp