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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


放課後。
日も暮れはじめて、すっかり冷え切った廊下を歩きながら2人で部室棟へと向かっていると

「お疲れ様です」

そう言って前方に佇んでいるのは、後輩マネージャーのスズさん。

相変わらず鈴が鳴るような可愛らしい声に、小柄で守ってあげたくなるような美人。
すっかり先輩になって、後輩マネージャーたちを教育しているみたい。

涼太と別れて女子の部室に入ると、中には私たち以外、誰もいなかった。

「まだ皆ホームルームかな?」

私は一時的に空きロッカーを使わせて貰う。

スズさんは、元々私が使っていたところを使用していた。

「……そうですね」

ロッカーも開けずに、俯いたまま動かないスズさん。
ここでようやく、彼女に元気がないことに気がついた。

「……スズさん? 具合でも悪いの?」

びくりと大きく震える肩。
明らかに、様子がおかしい。

「……いえ、なんでもないです」

少し、顔が青い。
夕日が差し込むこの部屋でも分かる、青白さ。
今日は無理に部活に出ないで、帰った方がいいかもしれない。

「スズさん、無理しないで。今日は帰って、ゆっくり休んだ方がいいよ」

「いえ、明日、休養日ですし」

明日がお休みだから、今日は無理してでも……と思っているんだろうか。

そんな事気にせずに、体調を万全にするのが最優先なのに。
いやいや、私自身もそういうタイプだった……。

本当に、無理は良くない。
身体を壊したら元も子もないよ。

「スズさん、本当に無理は」
「神崎先輩」

硬い声、だった。
何かを決意したような、そんな。

「……どうしたの?」

「先輩、明日はお暇ですか」

明日?
今日じゃなくて?

「明日は、空港で涼太のお見送りをして、午後からは空いているよ」

「……明日、お電話してもいいですか」

珍しい。
というよりも、初めてだ。
何か、悩みごと?

「私で力になれるなら、聞くよ」

スズさんは、不安そうな、悲しそうな瞳を向けてきた。

「先輩……すみません」

「ううん、気にしないで」

彼女の"すみません"が何を意味しているかなんて、この時の私には想像もつかなかった。



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