第73章 散華
「そういやさ、部室の荷物ってもう片付けたっスか?」
下駄箱から出した上履きを乱雑に放り投げて、足を入れる。
今までは部室に全部置いていたから、下駄箱を使うのは入学した年の4月ぶり、だろうか。
「……あ、うん、私は年末に片付けたよ」
「うあ、サスガ。オレ、今日片付けよっかな」
……おや?
みわの荷物が、増えてる?
あの重たいカバンの他に、ビニールの巾着袋のようなものを下げている。
なんか、下駄箱の荷物でも片付けたんスかね?
他愛もない話をしながら教室に入ろうとすると、みわがその手前で立ち止まった。
「私、ロッカーに荷物入れてから行くね」
「ん、リョーカイ」
1人寂しく教室に入ると、男女様々なクラスメイトからの挨拶を受ける。
とりあえず面倒臭いから、デカい声でオハヨと言って、個人への返答はごまかした。
黒板に目をやると、プリントがマグネットで貼り付けられていて、ぶっとい矢印とともに【今日提出!】の文字。
おっと、そういやそんなのあったな。
ロッカーに入れたまますっかり忘れていた事を思い出し、みわがいるであろう廊下へと戻った。
「あれ? 涼太?」
みわは既に荷物を入れ終えたらしく、ロッカーにカギをかけていた。
廊下のロッカーは、各自用意したカギをつけることになっている。
まあ、自由だから、付けてないヤツもいっぱいいるし、ダイヤル式のカギを付けていても、数字をひとつずらすだけで開くようにしてるヤツもいる。
オレは、プレゼント対策にダイヤル式のカギをつけてる。
最初はみわの誕生日を設定してたけど、どうやら推測できたらしく、勝手に開けられてる事があったので、今は笠松センパイの誕生日にしてる。
本人が知ったら怒るっスかね?
ロッカーを開けると、もう既に記憶のないプリントやら、ロクに書いてないノートやら、誰から貰ったのか分からないプレゼントやらが詰め込まれていた。
いや、オレが詰め込んだんだけどね。
これも、片付けなきゃいけないのか……。
はあとため息ひとつついて、違和感に気が付いた。