第73章 散華
「あの、涼太……ちゃんと、来たから、ね」
年始にみわを抱いて数日後、生理が来た事を告げられた。
ホッとしたのが半分、ガッカリしたのが半分か。
オトコってホントに勝手だな……。
改めて、もう軽率な事はしないと心に誓った。
結局あの後、みわのお母さんには会いに行っていない。
みわの気持ちを尊重したい。
そして2月、今日が全員登校する最終日。
明日からは自由登校となり、オレと青峰っちはアメリカへ行くことになっている。
みわと一緒に登校するのも、あと何回だろうか。
もう、卒業式を除けばこれがホントのホントに最後になるかもしんない。
みわもオレも部活には顔を出すつもりだけど、バイトもするつもりだ。
時間なんか、いくらあっても足りない。
とにかく今日は、横を歩くみわの制服姿を、目に焼き付けておかねばなるまい。
「……涼太? どうしたの?」
スラリとした手足が眩しい。
上から下まで舐め回すように観察していた視線が、みわとぶつかる。
コートとスカートから覗く肌は、いつも通りに白い。
その下に隠されているものまで思い出して、下半身が痛むのは不可抗力というやつだろう。
「な、なんでもないっス、ほらほら鞄持つっスよ!」
ごまかすようにみわのカバンを手に取ると、ずしり、驚くほどそれは重かった。
弁当と着替えしか入ってないオレのカバンとは大違いだ。
「えっ……自分の鞄くらい自分で持つよ、大丈夫!」
「みわ、重すぎじゃないスか? 何入ってんの?」
イタズラ心満載で、ファスナーの端をちょいとつまむと、中に見えたのは、教科書やノートなどだ。
うん、裏切らない。
それにしたって、普段あまり使わないような資料集とかまで持ち歩いちゃう?
オレなんて、ずっと学校のロッカーに入れっぱなしだ。
結局カバンはみわの手元へ戻ってしまった。
甘えてくれていいのに。