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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


ギシリ、ギシリ。

行きにみわと2人で上がってきたよりも、なぜか遥かに大きな音に聞こえる。

お祖母さんは、オレと夕飯を食べて、みわの食事の支度をして、先に寝てしまった。
そういや田舎のばーちゃんも、寝るの早かったな……。


居間に戻ると、机の上にはラップにかかったおかず達。
みわが下りてきたら、温めてあげよう。
そんなことを考えながら、古びているが柔らかく、座り心地の良い座布団の上に座った。

……こんな風にしてくれるお祖母さんも、みわの本当のお祖母さんじゃないんだよな……。

でも、みわがこうして正しく育ったのは、きっとお祖母さんの力が大きい。
みわの、唯一のこころの拠り所。

"お腹空いたら、黄瀬さんも好きに食べてね"

優しい微笑みを思い出す。

水でも貰おう……。
のそり、立ち上がって台所を目指す。

ふと、思い出した。
後は……以前会った、刑事か。

少し前に、気になって聞いた時には最近は連絡を取っていないと言っていた。

彼も警察官だ。
そうそう女子高生の相手をしていられるほど、ヒマじゃないんだろうな。

トットットッ、小気味よい音を立てて透明の液体がグラスに注がれていく。
喉が鳴るほど勢い良く、流し込んだ。



「……はぁ……」

ため息のような、得体の知れない吐息。
気付いたら、コタツに突っ伏して寝ていた事に驚く。

まだ、そんなに時間は経っていないようだけど……。

ウィンターカップが終わって、なんだかんだとバタバタしていた。
オレも、疲れてたんスかね。

もう、1月。
来月にはまたアメリカキャンプに参加して、3月の頭には卒業だ。

過ぎてみれば、あっという間だったな……。

大学寮に入れなかったら、アパートを借りる予定だ。
今まで、金に不自由していないのは……本当にカンシャしてる。

あんなにバカみたいにしている父親でも、オレたち3人をちゃんと育ててくれた。

オレは、あんな親になれるんだろうか?





「涼太……」

ぼんやりしていたオレの後ろから、聞き慣れたみわの声。

元気のない、声。





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