第73章 散華
え……?
どういう、こと?
暗闇の中、目が痛いほどの光を発しているスマートフォンに映し出された、文字。
意味が。
わから……な、い。
死を、望み……ます?
私、の?
ぐるぐるぐるぐる、回っているのは目なのか、思考なのか。
良くなったはずの頭がくらくらする。
それが、お母さんの、本心だったの?
私の記憶の中で、お母さんの笑顔は……ない。
それは、私が忘れてしまった訳じゃなくて、私はお母さんに憎まれ、疎まれていた……?
"どうしてあんたみたいな女が生きているのか"
悪夢の中で言われた言葉は、現実のものだった?
「みわ」
「わあっ!」
突然感じた人の気配で、驚き仰け反った。
「スマホの光が見えたから……目、覚めた? 体調はどうスか?」
暗闇の中で顔こそ見えないけれど、聞き慣れた優しいその声に、ドクドクと脈打っていた心臓が沈静化していくのを感じる。
涼太が電気の紐を引くと部屋中に明かりが満ち、その眩しさに、思わず目を細めた。
「あ、眩しいっスね、ごめん」
はは、と笑いを零した涼太の動きが、一瞬止まる。
その視線は、私のスマートフォンへと向けられていた。
「みわ? その花の花言葉……調べたんスか?」
明らかにその表情は強張っている。
もしかして……
「涼太、知ってたの?」
「……うん」
まさかの肯定の言葉に、彼の過去の発言が脳内でめまぐるしく再生される。
知ってて、お母さんに会いに行こうと言ったの?
どうして?
「みわ、きっと何かの間違いっスよ。花を贈る時に、花言葉まで気にするヒトなんてそうそういないって」
「そんなの、分からない、よ…お母さん、私のこと、嫌いだったのかな……邪魔だったのかな……いらなかったのかな……死んで欲しかったのかな」
「みわ!」
大きな掌が、頬を包み込んだ。
大好きなそのぬくもり。
麻痺してしまったみたいに、感覚がなかった。