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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


「ふたりとも、お待たせ」

両手を合わせて擦りながら、姉ちゃんは運転席に乗り込んだ。

「涼太、前」

「え?」

姉ちゃんは、助手席を指差している。
オレは今、みわと並んで後部座席に座っているのだが……。

「え、姉ちゃん、オレは」

「いいから前」

珍しいその物言いに、渋々と移動する。
外へ出て、たった数秒外気に触れただけなのに、身体はぶるりと震えた。

「何? 姉ちゃん」

「……」

そう聞いても、姉ちゃんからは返事がなかった。
なんなんだよ。

姉ちゃんの外車は、ゆっくりと駐車場を出発する。

とりあえず会話は諦めて、窓の外に目をやった。

流れていく景色は寒々しくて、早く春が訪れないかと願う。

……でも、春になったら……みわと離ればなれ、か。

新しい世界への期待と、不安。

オレたちは……

「涼太」

出発してからどの位経っただろうか。
ようやく姉ちゃんが口を開いた。

お喋り好きな姉ちゃんが、ここまで無言だったのが信じられないな。

そう思っていると、後部座席から規則的な寝息が聞こえてきているのに気付いた。
目をやると、少し青白い顔をしたみわが窓にもたれかかり、眠っている。
みわが寝てしまったから、話しかけてきたんだろう。

「あんた、気をつけなさいよ」

突然のその不穏な発言に、?マークが飛び出す。

「弟だからとかじゃなくてね、涼太はさ、特別……選ばれた側に居る人間だと思うの」

「……うん」

ケンソンしても仕方ない。
正直に、そう思う。
自分は人より少し、多くのものを持っていると。

「みわちゃんを完璧に守れなんて、そんな無理なことは言わない。でも、ちゃんと考えなさいよ」

「分かってる」

分かってる、つもりだ。

でも、なんで今そんな事を?


「なんか……嫌な感じがするの。
ホントに、気をつけて」

「なんだよ、ソレ」

「分かんないけど……オンナの勘的なやつ?」


やめてくれよ。


姉ちゃんの勘、いつも当たるんだから。




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