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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


リビングへ戻ろうとするみわの手を取って、2階へと向かった。

暖かいリビングであったまった筈の手は、あっという間に冷えていた。

細くて、すべすべで、小さな手。
丸くて、カタチのいい爪。
ちょっと力を入れたらバキリと折れてしまいそうだ。

少し赤い頬は、変わらず。

「え……っ、帰るって、どうしたの涼太?」

キシリと微かな音を立てながら階段を上っていくと、みわがリビングの方角を振り返りながら、戸惑っている。

「もう、十分話したっしょ。酔っ払いばっかだし、みわもまだ風邪治ってないし、帰ろ」

「待って、だってまだご挨拶も」
「ダイジョーブ、家出るとき顔出せば」

強引だろうか。
でも、少しくらい強引にしないと、みわはまた頑張って頑張って、ぶっ倒れるまで頑張るだろう。

「涼太……ごめんね。気を遣わせちゃって」

……?

「いや、気を遣わせてごめんはこっちのセリフだってば」

「私、家族との関わり……薄いし、それで涼太が気遣ってくれてるの、分かってる。
黄瀬家の皆さんが、ああやって仲良くしてくれるの、本当に嬉しいんだ」

きっとそれは、本心。
みわの目は、ウソをついてない。

でも、自分でも気付かないくらいもっともっと奥にある気持ち……

寂しいんだろう。
当然だ。

みわも、こうして両親と普通に話せるようにしてあげたい。

でもやっぱり、その為には……

「……みわ、お母さんに会いに行こう」

みわは一瞬、何を言われているのか分からないといった表情を浮かべた。

「え、え」

「みわのお母さんに言いたい事も、聞きたい事もいっぱいあるんスよ。
正月なら、仕事も休みでしょ。風邪治して、行こう。会いに」

きっと、あんな事があったのだから、母親からはみわに歩み寄れない状況なんだろう。

みわが家族と繋がれるのなら……みわがそれを望むのなら、オレは大したこと出来ないかもしんないけど、出来る限りの事をしたい。



みわは、たっぷり数分の時間を要して……ゆっくりと、頷いた。



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