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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


真剣な父親のその口調に、姉ちゃんはそれ以上反論する事はなかった。

オレは病院で働いているわけでもないし、誰かの親でもないから、正直……どっちの気持ちもよく分からない。

でもきっと、どちらも真実で、現実にあることなんだろう。

それよりもまず、父親に言わなければ……

「……とにかくさ、みわの家族は」

「聞いているよ、涼太」

「……は?」

「母さんから聞いてる」

知ってた?
知ってて、あんな話を?
何考えてんだよ。

「それならなんで……」

「涼太」

遮るように名前を呼ばれ、声の主の方向に目をやると……そこにもまた、真剣な顔をした母親が。

「みわちゃんのそばにいるって、決めたんでしょう?」

そうだ。
でも、この違和感はなんだ?

「それは勿論そうだけど……ナニ、ふたりとも、みわのコト……なんか知ってんの?」

どれだけ聞いても、2人は沈黙を守っていた。

……これじゃラチがあかない。

とにかく今は、みわが父親の発言で傷ついていないか、それだけが心配だ。

トイレへと立ったみわの後を追った。





「涼太?」

ちょうどみわはトイレから出てきたところだった。

少し低めの、落ち着く声。
先ほど、両親と話していた時の湿った声ではなくなっている。

「どうしたの? 涼太もおトイレ?」

「あ、いや、そうじゃないんスけど、さ」

「?」

キョトンと目を丸くして首を傾げている姿が可愛い。
いや、今そんな事を言っている場合じゃない。

「ごめんね、うちの父親が」

「お父様……どうかした?」

みわは心当たりがないといった様子だ。

「無神経にアレコレ言ってさ、みわが嫌な気持ちになってねぇかと思って」

ふ、と優しい笑顔。
みわの、こういう笑顔も好きだ。
でも……

「そんな事ないよ。黄瀬家は、素敵だなあって思ってた。心配させちゃってごめんね」

みわは自覚がないんだろうか。
その、寂しそうな表情。


「みわ……帰ろ」



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