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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


お父さんに会う事をあれだけ望んでいたみわの前で、また無神経な事をしている事に気付いた。

何度後悔すれば済むんだよ、このバカ頭は。

「私のお父さんも、私の事……愛してくれていたのかな」

ぽつり。
テーブルの上にそっと置いていくようなみわのその呟きに、全員の目が奪われた。

オレは、分からない。
その言葉に、答えてやることが出来ない。
気軽に言える内容じゃ、ないんだ。




「自分の子どもを愛していない親なんていないよ」

意外にも、沈黙を破ってそう答えたのは父親だった。
すっかり酔いが回って赤い顔をしてるクセに。

「そう……なんでしょうか」

うん、オレもそう思う。
こんな娘、可愛くないわけないじゃないスか。

けど……。

「お父さんとは会っていないのかな?」

「ちょ……っ!」

サラッとみわの傷を抉るような事を言う父親。

みわの家庭に色々な事情があるというのは、よく会う母親と姉ちゃんたちにしか言っていなかった。
心底、失敗したと思った。
止めなければ、そう思ったのに。

「そうなんです。うちは、両親……離婚しているので。私は、お母さんにもしばらく会ってません」

それなのにみわは、迷う様子もなく答えた。

「そうか、それは大変だったね。お父さん、みわちゃんに会いたがっていると思うよ」

「もしそうなら……嬉しい、です」


しん。
一瞬で静寂が訪れて、耳が痛くなる。
頭まで痛いのは、そのせいなのかはたまた父親のせいか。

「あ、すみません……お手洗いお借りしてもいいですか?」

みわのその言葉で再び場に音が現れて、ドアの閉まる音がしてホッと一息。

父親に注意しなければ、そう思って口を開こうとしたら、上の姉ちゃんに遮られた。

「お父さん、あんまり気軽に言わないで。
子どもを捨てる親も、虐待する親もいる。
子どもが病院に置き去りにされるのだって、珍しい事じゃないんだからね」

「それは分かっているつもりだよ。そういう人たちを肯定するつもりもない。でもね、お前たちが生まれてきた、あの瞬間……お父さんは一生忘れないくらい感動したんだ」

父親は、いつになく真剣だった。



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