第73章 散華
下の姉ちゃんの質問責めに遭ったと思ったら、上の姉ちゃんまで起きてきて、そこからは散々だった。
旅行のお土産を次から次へとみわの手に持たせ、来年の旅行は一緒に行こうと誘いだし(オレが年末年始は一緒に過ごすんだから、断固拒否!)、今日は泊まっていけとゴネだし、大変な事になった。
みわも体調が万全じゃないからとなんとか説得。
……だいぶ渋られたけれども。
「なんか妹が増えたみたいで嬉しい! 可愛い妹、欲しかったんだよね」
と、2人口を揃えて言う。
「悪かったね、可愛くない弟で」
大体、上の姉ちゃんは妹も弟もいるんだからモンクないだろ、と言ってやりたいが、そういうものでもないらしい。
みわは一体、どう反応したら良いのか困った様子。
「みわちゃん、ごきょうだいは?」
「あ……えっと、1人っ子です」
「そうなんだ! じゃあ丁度いいね!」
何が丁度いいんだ。
助け舟を出そうにも、暴走しまくっている姉ちゃんを止められた試しがない。
その内、何故か酒盛りが始まった。
いや、飲んでるのは父親と上の姉ちゃんだけなのだが、最もアレな2人が飲み始めたとなると……
「みわ、帰ろ」
「えっ?」
「帰ろ、火の粉が降りかかる前に」
「なんだ、聞き捨てならないな涼太、そんな事言われると父さん傷つくぞ」
「アンタが一番厄介なんだよ!」
いつもの父子のやり合いに、みわがくすくすと笑っている。
「仲良しだね」
「みわ、どこが!? このヒト自由すぎて、ホント嫌なんスよ!」
指差した先、テヘペロ☆という表現が似合いそうな表情を浮かべた父親。
小さい頃は母親にそっくりとしか言われなかったが、年をとるにつれて父親にも似てきたと言われるようになった。
なんかヤダ。
すげぇヤダ。
「冷たいな、涼太は。父さんはこんなにも涼太を愛しているのに」
「ハイハイアリガトウゴザイマスオトウサマ」
酔っ払いは相手にしないに限る。
「愛して……」
みわは、父親の言葉を反すうして考え込んでいる。
しまった。
バカかオレは。