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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


母親がお気に入りの、クリスタルの高級ブランドの小さなガラス皿に乗せられたバニラアイスをひとくち。

「……んまい」

今まで食べたどのバニラアイスより、美味い。

「美味しい……」

みわも、驚いたようにスプーンを口に運んでいる。

「美味しいでしょう。お姉ちゃんが教えてくれたの。お取り寄せしてるのよ」

「ふうん」

少なくとも、オレが実家にいた頃にはなかった。
すげぇ高そうだ。存分に味わわせてもらお。

「涼太はいい彼氏かな?」

「ブッ!」

父親が嬉しそうにそんな事を突然聞くものだから、吹いた。

「な、なに聞いてんだよ」

焦って手で拭ったもんだから、手がベタつく。
大体、親から直接そんなこと聞かれて"イマイチですね"なんて言える子が居たら見てみたい。

こんなお調子者の父親の言うことなんて、相手にしなくていいっスよ、みわ。
そう言おうとして、彼女に目をやると……

眩しくなる位の笑顔が、そこにはあった。

「……はい」

はにかんだような、幸せそうな……そう、本当に幸せそうなその笑顔に、言葉を失った。

「そうか。なら良かった。
みわちゃん、涼太は頼りにならないかもしれないけど、よろしくね」

対して、父親はニヤニヤと含みのある笑顔。
みわが帰ったら、絶対なんか言われるやつだ、これ。

「みわちゃん」

今度は母親だ。

「はい」

みわは背筋をピンと伸ばしたまま。
まるで、面接のようだ。

「わたしたちの事、本当の家族だと思って、頼って貰えると嬉しいわ。何かあったら、遠慮なく相談してね」

なぜ両親はこんな話をするのだろう。
オレの大切なひとだと、話をしたからだろうか。

「……ありがとうございます」

みわの声が、少し水分を含んでいる。

「あ、みわちゃん! 熱はどう!?」

面接会場のような空気は、下の姉ちゃんの登場で無理矢理切り替わった。



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