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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


結局あの後、お姉さんに強引に押されまくり、涼太は部屋から追い出されてしまった。

「はあ〜、やっとみわちゃんとふたりきりになれた! はい、寝て寝て!」

「う、す、すみません……」

お姉さんの前でグッタリと寝込むわけにはいかないと思いつつも、熱を持った身体は言うことを聞いてくれず、諦めてベッドに全てを預けた。

体重を受け止めてくれるスプリングは、どこか懐かしくて……。
涼太と一緒にこのベッドの上で過ごした日々が、何度も何度も繰り返し思い出される。

涼太と……彼と居て、初めて"記憶"が、"想い出"が、優しいものになった。

私を苦しめるだけだった……過去というものの一片に、それは鮮やかにたおやかに、色付いている。

「みわちゃん、気分悪くない?」

覗き込み、私を心配そうに見守って下さっているのは、大好きなお姉さん。

「ありがとうございます、大丈夫です。お姉さん、髪……素敵ですね」

そう、ふわふわのロングだったお姉さんの髪は、バッサリと切られていた。

ショートカットよりは少し長い……ボブ、というのだろうか。

「ホント〜? ありがと!
失恋して髪切るなんて、我ながら古いっていうね、あはは」

失恋……
その明るい言葉と表情とは裏腹なその単語に、自分の無神経な発言を恥じた。

「っ、申し訳ありません!」

「いいのいいの、謝る事なんて全然ないんだから」

涼太に似た瞳はどこか寂しげな色を孕んでいる。

「ホントにさ……この世の中で、たった1人の相手を見つけ出す事がどれだけ難しい事なのかって、痛感するわ」

「……」

「だって、世界には男と女しかいないのよ?
その中から1人って……どんだけの確率かって話よね」

お姉さんの……言う通りだ。
全ての出会いが、どれほど奇跡的なものなのか。

「私は彼しかいないと思っていたけど、彼には私じゃ無かったんだよね、残念ながら」

彼には、私じゃなかった……。

耳が痛くなる言葉。
私は涼太がいなくちゃ、ダメだけど……

涼太は、私がいなくてもきっと大丈夫。

今まで、幾度となく考え、納得してきた言葉だ。


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