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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


ふと、考えることがある。
みわは、いつまで母親と暮らしていたのだろうか?


「いただきます……」

具沢山の雑炊を乗せたレンゲが、小さな口に吸い込まれていく。

冷まし切れていなかったのか、はふはふと熱そうにしているのが可愛らしい。

「お口に合うかしら」

「わ、おいしい……です」

そわそわとみわの様子を伺っていた母親が、その言葉を聞いて安堵の表情を浮かべた。

「良かった。涼太も熱出すたびにこれを食べてたのよ」

ふふ、と母親と笑い合っているみわの……目の縁が赤くなっているような気がする。

もしかして……

「ん、後はオレ、見てる」

「そう? 何か欲しいものがあったら、言ってね。みわちゃんは娘みたいなものなんだから。あ、あとはね」

「分かった、いいから」

「……もう。みわちゃん、気にせずゆっくりしてね」

「すっ、すみません!」

名残惜しそうにチラチラとみわを見る母親の背を押し、部屋から追い出した。

「もー、ごめんね。うちのヒトたち皆強引でさ……」

そう言って振り向くと……

やっぱり……みわは泣いていた。

雑炊をゆっくり、口に運びながらぽろぽろ、ぽろぽろと。

頬を伝った涙が、パーカーに跡をつけていく。
そのどこか美しい光景に、しばし目を奪われた。



「……みわ」

「あっ……ご、ごめんね、皆さん……優しくして下さるから、なんか、なんでだろう、涙が……」

目と鼻を赤くして、顔をくしゃくしゃにして涙を流すみわ。

慌てて目をこすり、涙を止めようとしているその細い身体を、そっと抱きしめた。

多分……みわの記憶にはない、母の愛。

皆が当たり前のように受けて育つ、親の愛情。

以前、みわのお祖母さんに聞いた……
みわは、母親に愛されなかった、と。

オレに、何が出来るんだろうか。

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