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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


「38.1℃」

オレが体温計の小さな液晶に表示された数字を読み上げると、ベッドに寝かされたみわが、驚きの表情を浮かべた。

「そんな……なんで、だろう」

「大会も終わって、疲れが出たんスかね。薬飲んで少し寝な」

「あっ、あの、私がこんな状態でここにいても邪魔になるだけだから、帰るよ……!」

「そんなん気にしなくていいっスよ」

必死に起き上がろうとするみわの肩を両手で制止して、布団をかけなおした。

「や……もう、大丈夫だから……」

この熱じゃ、頭痛も寒気も酷いだろうに、ツライとは決して言わないみわの姿に、胸が痛む。

きっとこうやって今までずっと、他人に気を遣わせないように、迷惑をかけないようにとやってきたんだろう。

そんなやりとりをしていると、コン、コンと軽いノックの音が響く。

「涼太、入るわよ」

「うん」

ドアの向こうから、トレーを持った母親がやってきた。

「みわちゃん、どう? 疲れが出ちゃったのかしらね」

「あのっ……すみません! すぐに、帰りますので!」

ペコペコと謝るみわをものともせずに、母親はトレーに乗せた小さな鍋の蓋を開けた。

「あ、あの……っ」

「雑炊、食べれるかしら? 苦手なものある? りんご、すりおろしてきましょうか」

すりおろしりんご、ちっちゃい頃風邪引くと、よく作ってくれてたな……なんて思いながら見慣れたその背中を眺めた。

ゆっくり休んでいって欲しいというのはオレも同意だ。

みわに気を遣わせたくはないけど、あんなに熱があるなら話は別。

「も、申し訳ありません……お疲れのところ」

何言ってるの、甘えていいのよ、と言われ、縮こまっているみわ。

みわは、甘え方が分からないんだろう。




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