第73章 散華
「オレたちはみわの事だって、仲間だと思ってるっスよ?」
……でも、それは私が涼太の……
「たとえ、みわがオレの彼女じゃなくてもね」
「……?」
こころの声に返答したかのようなその言葉に、私はまたアホヅラを曝している。
「何スかその顔。当たり前でしょ、みわとキセキの皆の関係は、みわが皆と過ごした時間で築いたものなんだから」
"友達"だと言ってくれた赤司さんの声を思い出す。
皆の笑顔を思い出す。
……こんな事を言っている私は、きっと醜い顔をしているだろう。
皆の優しい気持ちを台無しにしている。
また左手が痛んで、涙が出てきた。
「みわ」
「あれ、ごめんなさい、なんでだろ、私……」
いつものように、大きな手が頭を撫でてくれる。
「みわはもうちょっと、自分に自信つけなきゃ、ね」
「自信……」
おばあちゃんにも、時々言われる。
あきにも、マクセさんにも……。
こんな卑小な自分に、自信なんか持てないよ……。
こんなに頼って生きていて、このひとが近くにいなくなったら、私どうなるんだろう。
「大丈夫。みわは、オレが選んだ女なんだから。ね?」
甘い甘いはちみつのように、とろりと耳に入ってくる心地良い声。
涼太のこの声は、身体に回った毒のように、脳を冒して、指の先まで痺れさせるんだ。
気が付いた時には、もう意識が浮遊し始めていた。
そう言えば……青峰さんの今後って、聞きそびれちゃった。
どうするんだろう、卒業後は……
そんな事がチラリと脳裏をよぎったけれど、すぐに意識が霧散した。