第73章 散華
「みわ……痛く、ねぇスか」
「んっ、ぁ……いたく、な……いっ……」
「みわ、気持ち……イイ?」
「あッ、きも、ち、い」
辛い……本当に辛い過去に苦しめられているみわ。
女というだけで、身体も心も犯されて……。
付き合い始めて間もない頃、ぽつりと漏らしているのを聞いた事がある。
"女じゃなかったら、こんな思い……しなくて済んだのかな"
オレは寝たフリをしていたから、彼女はオレがそれを聞いていた事は知らない。
その悲しい言葉が、ずっと胸の中に残っていた。
でも、同時に思ったんだ。
オレが、女としての幸せも与えてあげたい、って。
こんなに激しく抱いた事は、今までにないかもしれない。
壊さないように、という気持ちと
壊してしまいたい、という欲望が
同時に存在していた。
頭も真っ白で、湧き上がる情動を抑える事は不可能だった。
腕の中で力なく揺れる身体。
衝動的に、その細い肩に噛み付いた。
「……ッ!?」
柔肌にくっきりとついた、噛み跡。
「涼太……?」
「は、ゴメン……新年だし、神が憑く、って事で噛み付くの、イイみたいっスよ……?」
赤司っちが高尾クンとそんな話をしていた。
完全に受け売りだ。
っつか、勢いで噛んでしまっただけで、そのエピソードは後付けなんだけど。
「……えっと、獅子舞、だっけ?」
流石のみわ。
知っていたらしい。
「そそ、それそれ」
そう軽く返事をして、今度はふわふわの胸に噛み付く。
「あ……っ」
その反応を見て、興奮度が増し、彼女に埋め込んでいる自分がまた膨張するのを感じる。
ヤバい。
変態なオレがまた顔を出し始めた。
白い肌にくっきりと刻まれた歯型が、散らされたキスマークとはまた異なる所有の印のようで。
ガクガクと揺さぶりながら、ひたすら肌に歯を食い込ませていった。
「ふ……ぁ……」
みわから弱々しい喘ぎ声しか漏れなくなり、首に回された腕にも、殆ど力が入らなくなってきた。
……オレも、限界が近い。
グッと奥歯を噛み締めて、何度も襲ってくる絶頂感をやり過ごす。
「りょーた……」
呟くようにオレの名前を呼んだみわが、突然オレの肩に歯を立てた。