第73章 散華
"愛してる"と、伝えた事がある。
モチロンあの時だって、大袈裟に言ったわけでも、ましてや嘘をついたわけでもない。
でも、今の気持ちは、あの時よりも、もっともっと先にある、そんな感じ。
この、胸を占める気持ちをなんと表現したらいいんだろう。
「みわ」
「涼太……うれしい……けど私、そんな風に言って貰える価値なんて、何も無いのに」
ポロポロと零れ落ちる涙が、唇を濡らし、顎を濡らし、鎖骨を濡らしていく。
それが美しくて、流れを追うように視線を泳がせていると、その源である濡れた瞳が一瞬目に入って、反射的にまた唇を塞いだ。
舌が、絡み合う。
戸惑うようにしていた彼女も、次第に応じてくれる。
愛おしくて、愛おしくて。
「ん……っ、ふ」
「……みわ、何言ってんの」
オレがみわのどこに惚れたか、言わなきゃ分かんないんスか?
……そう言おうとして、やめた。
全部、言う。
みわへの想いと言葉が、熱となって燻って体内で暴発しそうだ。
唇を繋げたまま、彼女の柔らかい素材のニットに手を差し入れる。
ニットよりも更に柔らかい肌に、触れた。
細くくびれた腰を撫でて、そのまま指は背中へ。
くっきりと浮き出た肩甲骨をさすると、唇の隙間から甘い吐息が漏れた。
「っ、ぁ」
「もう、止まんないから……
みわ、おとなしくオレに愛されて」
一瞬、ピクリと身体を震わせた後、小さく頷いて体重をオレに預けてきてくれた。
「みわ」
「涼太……ご、ごめんね」
「謝んないでってば……」
再び唇を塞いで、ゆっくりと押し倒した。