• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華



「……っ、っく、っ」

しゃくりあげて泣いている、小さくて柔らかい唇を、労わるように、慰めるように吸い上げる。

その不安な気持ち、ひとりで抱えないで。
オレに分けて。

「りょうた」

瞳に涙をいっぱい溜めて、震える声でオレを呼ぶみわを、壊してしまいたい。

壊して、恐怖も、不安もない場所に閉じ込めて、オレだけのみわに。

守ってあげたいと思う気持ちに嘘は全くないのに、やはり脳裏をよぎってしまう正反対の独占欲に苦笑しながら、涙の筋がついた頬に唇を滑らせた。

「ご、ごめん、なさい。こんなことまで話すつもりはなかったのに。
変、だよね。りょ、たの事、ずっと好き、って言っておいて、忘れない、か、不安、って」

「変じゃないっスよ」

原因も分からない記憶障害を、怖くない人間がいたら見てみたい。

「ごめ、なさ、涼太の不安だけ取り除いてあげたくて、それだけだっ、た、の、に……っ」

言葉の最後は涙に濡れて、ハッキリとは聞こえなかった。

こんな時までオレに気遣う健気な彼女を、再び自分の胸に抱き込む。

「謝んないで……大丈夫っスよ、みわ」

「っ、りょ、た?」

「何があっても、オレはみわのそばにいるから」

温泉での彼女の言葉、忘れるわけがない。
さっきの言葉だって。

皆、確証もない愛というものをどうやって信じてるのかと、疑問に思っていたけど……。

よく考えてみろよ、自分。

見てくれじゃない、オレ自身を見てくれた。

命懸けで、オレを守ってくれた。

あんな醜い嫉妬に狂うオレでも、全身で受け入れようとしてくれた。

オレが辛い時、苦しんでる時、いつもすぐそばに居てくれた。

支えてくれた。

嬉しい時、一緒に笑ってくれた。

なんで、悩むことがあんだよ。

なんでここまで、遠回りしてわけわかんなくなってたんだ。

目の前の感情に振り回されて、信じていいものすら信じられなくなって。

オレを孤独にしていたのは、オレ自身だったんだ。



/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp