第73章 散華
あれはウィンターカップが終わって、すぐのこと。
快晴だと言うのに肌を叩く風は冷たくて、早く春が来ないかな……なんてひとりごちながら、みわのお祖母さんの家のインターフォンを押した。
「コンチハ、黄瀬です」
「あら、黄瀬さん?」
「どもっス」
お祖母さんはいつものように明るく、でもちょっと不思議そうな顔をして玄関から出て来た。
「あら、みわは一緒に帰って来なかったのかしら?」
「ああ、なんかノート買いに行くって……。
今日は、お話したい事があったんで、先に来たんス」
お祖母さんは、何かに気がついたような表情。
「そうだったの。まあ、立ち話もなんだから、入って。今お茶を淹れるわね」
幾度となくお邪魔している、居間。
国民的アニメのお茶の間をそのまま再現したような造りだ。
既に温まっているコタツに足を入れ、淹れて貰ったばかりの緑茶を口にした。
「優勝したんですってね。おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
「みわもずっと頑張ってきたからねえ。
泣きながら、遅くまでずっと話してくれたわ」
以前も思ったけど、やっぱりお祖母さんが微笑むと、どことなくみわに似ている。
今までは血筋かなとか、遺伝子かなとか思ってたけど、2人には血の繋がりがないのだと知った。
それを知ってから見てもやはり2人の雰囲気は本当に良く似ている。
よく、長年連れ添った夫婦は似てくるというけど、それと同じようなものだろうか。
……なんか違うか。
「それで、話したい事って言うのは?」
「あ、ハイ。
みわの事、なんスけど……」