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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


「ウマかったっスね」

「うん!」

再び、冷気が支配する世界へ戻ってきた。

ぽかぽかと温まった身体も、寒風の猛攻にあっという間に芯から冷え、ぶるりと身を震わせる。

「オレ、ホント冬苦手」

以前私がプレゼントしたイヤーマフを押さえながら、肩を竦めている姿がなんだか可愛らしい。

そうだね、涼太は……やっぱり太陽の季節が似合う。

「あ、そういや空港があんなトラブルじゃ、父親も帰って来れないっスかねえ」

お……とう、さん?
涼太の?

そう言えば、今まで一度もお会いできたことが無い。

「今年の年始は皆で集まれそうって、みわに会えんの楽しみにしてたんスけど」

……私の知らないところで、そんなお話が。

そっか、飛行機が飛ばないという事は、移動手段がなくなるってことだもんね。

代わりに新幹線を使ったり出来ない所に行っているんだろうか?

「えと……出張先から飛行機で帰れなくなるから、ってこと、だよね?」

「あーまあ、うちの父親パイロットだから」





「……ぱ?」

「あれ? 言ってなかったっけ? パイロット」

「い、言ってないよ! 出張が多いお仕事だって言うから、営業さんか何かかと思ってたのに!」

「はは、確かにそうっスね。
うち皆、出張って言うのクセっスわ」

ははって……
サラッと笑って片付けないで欲しい。

パイロットって。
思えば、そういう特殊な職に就いているひととお会いしたことがない。

「お母さんとはどこで出会ったんだろう?」

「うちは母親が客室乗務員やってたからね、あの2人は職場恋愛なんスよ」

「ほえ……なんか凄い」

涼太のお母さん、優しくて気が利いて、明るくて綺麗で。

あんなひとが職場に居たら、絶対に好きになっちゃうよ……。

「今まで、教えて貰った事なかったね、涼太のお父さんとかお母さんのこと」

「そうっスね、わざわざ話したことはないっスかね」

涼太も気を遣ってか、普段あまり家族の話をしない。

「みわには全部、知ってて欲しいからさ……オレの事も、オレの家族のことも」


はらり。
空に、白い結晶が踊りはじめた。



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