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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


「はい、お待ちどう」

嗅いでいるだけで空腹が刺激されるような香りと共に、2杯のラーメンが差し出される。

割り箸を、カウンターに設置されている割り箸ケースから2本取って片方を涼太に渡そうとしたら、彼も同じ事をしていた。

目を合わせて笑い合って、お互い、相手が取ってくれた割り箸をパキリと割る。

「あ、キレイに割れた。両思いっスね」

「……なぁに、それ?」

「割り箸が真ん中でキレイに割れると両思い、ってよく言わない?」

「……初めて聞いた……」

ちょっとしたことでも、なんかウキウキする。

私の手にある割り箸も、キレイに割れた。




麺を啜る音が、静かなお店に響く。

騒がしいテレビ番組はいつの間にか終わって、ニュース番組に変わっていた。

また、空港のシステム障害のニュースが読み上げられている。

「大変そうだね」

「ホントっスね」

2人で画面を見上げていると、大将が小皿を2枚、カウンターの上に置いた。

お皿の上には、炒飯。

「あれ? 頼んで……ないっスよね?」

こくりと頷いて返す。

でも、他にお客さんは1人も居ない。
オーダーミスという訳ではなさそうだけど……?

「サービス」

大将はぽつりとそう言って、お鍋を洗い出した。

再び2人で顔を見合わせる。
切れ長の瞳が、丸みを増している。
またくすりと笑って、声を揃えてお礼を言った。



ありがとう。

このひとがいるこの世界が、好きだ。




大将のラーメンと温かい気持ちで、
すっかり身体もこころも温まった。

今日は、ワリカンで。



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