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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


「あ、雪っスね」

「ほんとだ……」

はらり、はらり。

音もなく舞う白い雪は、やっぱり妖精に見えて。

涼太との距離を詰めるお手伝いをしに来てくれたのかな、なんて思ったりして……。

妖精さん、力を貸して。

意識して、大きく足を踏み出した。
縮まったのはたった、数センチ。

普段、肌と肌を合わせている筈なのに、今はたったこれだけの距離を縮めることが、出来なくて。

「ここ数年さ、多くなったっスよね。
年末年始に、積もらない程度の雪」

「っ!」

突然そう言って振り向かれて、一瞬フリーズした。

詰めた数センチは、あっという間にまた広がってしまう。

「あ、うん、そだね」

「ん? どうかしたんスか?」

そう聞き返す声も、微笑みも優しくて。
心臓が握り潰されたみたいだ。

「ううん、なんでもない」

「もっと寒くなる前に早く帰ろっか。
送ってくっスよ、いこ」

なんだろう、この気持ち。




どうしよう。





「お祖母さんには、また別の日にちゃんと新年の挨拶に行くっスね」

「……ん」

微風に煽られて舞う雪が涼太を纏って、まるで魔法がかかっているような神聖さを醸し出している。

「なんか、もうあの体育館で練習する事もないって、変なカンジっスわ。
まあ、監督はいつでも来いって言ってくれたし、行くけどね」

「…………ん」

魔法、かけられてるのかもしれない。
涼太に。

「まあ、バスケ部はさ……みわ?」

「…………」

解けない魔法。
……解けなくて、いい。

「みわってば」

「涼太」

「ん? どしたんスか?」

「チョコ、食べたいな。
さっき買ってくれた……やつ」

「いいっスよ。塩っからいモン食べた後って、無性に甘いもん食べたくなるよね」

ずっと、一緒にいたい……。



勇気を出して、袋からチョコレートを取り出そうとした大きな手を、捕まえた。


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