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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第19章 夏合宿 ー2日目ー


車が体育館に到着しても、オレは手を離す事が出来なかった。

みわっちも、動かなかった。

「着きましたよ〜?」

運転手さんが、不思議そうに話しかける。

「あ、はい! 申し訳ありません!」

するりと手が離れていった。

あんなに近くにいたみわっちが、今はすごく遠くに感じる。
オレも車を降りて、荷物の移動を手伝った。

「あ、黄瀬くん、いいよやるから」

「こんな荷物いっぱいあったら何往復もしなきゃなんないでしょ、2人でやれば速いっスよ」

「ありがとう……」

しかし、すごい量だ。
差し入れを作るための材料が入ってるクーラーボックスや、いくつものボストンバッグがある。

更に部員達のカバン(着替えなどを入れた小さいものだが)だから、相当。

「これ、1人で大丈夫なんスか?」

「大丈夫、そこに置いておいてくれれば後はやるから!」

ニコニコと笑顔のみわっち。
傷だらけの唇が痛々しい。
車内での涙はなんだったんだろう。

「もうこれで充分。ありがとう! 黄瀬くん、走る前にテーピングするね。そこ、座って」

宿の車も帰っていった。
皆が走ってここに辿り着くまでにはまだまだ時間がかかる。

蝉の声だけが響き渡るなか、日陰でテーピングを施して貰う。

みわっちのこの真剣な表情、好きだ。

「はい、これでいいかな」

「ありがと、みわっち」

距離を置くと勝手に決めたのに、彼女に触れたくて仕方ない。

「みわっち……触っていー……?」

少し驚いた表情のみわっち。
今度は顔が紅く染まった。

両腕でみわっちを包み込む。

身体が少し強張っていて、初めて抱き締めた時の事を思い出した。
何かを怖がっている時のみわっちだ。

「……ヘイキ?」

ふわりと髪の柔らかい香り。
髪にキスをする。

みわっちは何も言わない。
頬を少しだけ胸にすり寄せている。

その力ないささやかな動きに、また泣き出してしまうのではないかと思った。

「黄瀬くん……ありがとう。無理しないでね。行ってらっしゃい」

オレから触れたいと言ったのに、何故かお礼を言われてしまった。

「うん……行ってくるっス!」

後ろ髪引かれる思いで、その場を離れた。

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