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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第72章 散華


「あ、雪っスね」

「ほんとだ……」

はらり、はらり。

音もなく舞う白い雪は、やっぱり妖精に見えて。

涼太との距離を詰めるお手伝いをしに来てくれたのかな、なんて思ったりして……。

妖精さん、力を貸して。

意識して、大きく足を踏み出した。
縮まったのはたった、数センチ。

普段、肌と肌を合わせている筈なのに、今はたったこれだけの距離を縮めることが、出来なくて。

「ここ数年さ、多くなったっスよね。年末年始に、積もらない程度の雪」

「っ!」

突然そう言って振り向かれて、一瞬フリーズした。

詰めた数センチは、あっという間にまた広がってしまう。

「あ、うん、そだね」

「ん? どうかしたんスか?」

そう聞き返す声も、微笑みも優しくて。
心臓が握り潰されたみたいだ。

「ううん、なんでもない」

「もっと寒くなる前に早く帰ろっか。送ってくっスよ、いこ」

なんだろう、この気持ち。




どうしよう。





「お祖母さんには、また別の日にちゃんと新年の挨拶に行くっスね」

「……ん」

微風に煽られて舞う雪が涼太を纏って、まるで魔法がかかっているような神聖さを醸し出している。

「なんか、もうあの体育館で練習する事もないって、変なカンジっスわ。まあ、監督はいつでも来いって言ってくれたし、行くけどね」

「…………ん」

魔法、かけられてるのかもしれない。
涼太に。

「まあ、バスケ部はさ……みわ?」

「…………」

解けない魔法。
……解けなくて、いい。

「みわってば」

「涼太」

「ん? どしたんスか?」

「チョコ、食べたいな。さっき買ってくれた……やつ」

「いいっスよ。塩っからいモン食べた後って、無性に甘いもん食べたくなるよね」

ずっと、一緒にいたい……。



勇気を出して、袋からチョコレートを取り出そうとした大きな手を、捕まえた。


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