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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華







アップルティーと一緒に出されたクッキーをひと口。

ぱきっ、と乾いた音が響いて、ようやく2人の間に会話がなくなっていた事に気付いた。

しん……と、外の寒さのような、耳が痛くなる沈黙が部屋を包んでいる。

つい、涼太と一緒にいる空間が心地良すぎて、会話を忘れていた。

何か、何か話さなきゃ、だめ、だよね。

「……オレさ」

「あ、うん」

涼太が、窓の外を見下ろしたまま、こちらに視線は送らずに話し始めた。

「みわと居て、こういう会話のない時間、好きなんス」

えっ
同じこと……考えてた?

「なんかさ、あれ話さなきゃとか、何話せばいいかとかさ、考えんの疲れない?
みわと居る時はオレ、素なんスよね」

「あ……私も、そう思う」

「ホント? やったね」

そう言って、顔をくしゃっと崩して笑う姿が、あまりに無邪気で。

見惚れているうちに、呼吸をするのも忘れてしまいそう。

好き。

好き。

どんどん、好きになる。





「みわはさ、2月とか3月、どーすんの?
4月からは、お祖母さんの家から大学通うんスか?」

「あっ、あのね」

今まで、ちゃんと時間が取れずに、話せていなかった事をまとめて話した。

1月中は、バスケ部に顔を出しながら、勉強をすること。

2月3月、自由登校になってからは、バイトをしてお金を稼ぐこと。

4月からは、家を出て1人暮らしをすること。

「……そっか、家……出るんスね」

「涼太は、どうするの?」

「んー、オレも早めに寮出てさ、次のトコに引っ越さなきゃとは思ってるんスけど」

涼太の大学は、神奈川のはずれにある。
東京の実家からでは、通学に何時間かかるか分からない。

普通の学生ならまだしも、これからもバスケ漬けになる涼太なら、近くで1人暮らしした方が、何かといいだろう。

「まだまだカネかけちゃうっスね、親には。
カンシャしてるっスよ……直接は、なかなか言えないけどさ」

照れ臭そうにそう言う彼の表情は、高校生らしい年相応のものだった。


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