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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


「それにしても、遅いっスね……腹、減んない?」

あれからまた少し時間が経っても、誰も帰ってくる気配がない。

紅茶とクッキーで凌いでいたお腹も、そろそろ我慢の限界とでも言うかのように、クルルルと鳴き出していた。

「そうだね、お腹……」

そこまで言ったところで、涼太のスマートフォンが振動した。



「モシモシ姉ちゃん? ……うん、げ、マジで?」

涼太が驚いたように窓の外を眺めて、またこちらに向き直った。

「テレビ見てないから知らね。
……うん、でも今日みわ来てるんスよ。
あー……うん、あー……分かった」

なんだか煮え切らない様子で、通話を終えた。

「お姉さん達、どうしたの?」

「んー、なんかさ、空港のシステム障害かなんかで、飛行機飛ばないんだって」

「へ!?」

「ニュースで大々的にやってるらしいっス。
なんか、手続きやらなんやらで、なかなか連絡出来なかったんだってさ」

そう言いながら涼太はテレビをつけ、ニュース番組にチャンネルを合わせた。

キャスターが丁度、その話題を読み上げているところだった。

大規模なシステム障害で、年末年始の観光客に大打撃。
各方面に多大な影響が出ているらしい。

ハッキングされたような形跡はなく、現在原因究明中、とのことだ。

「じゃあ、帰ってくるまでにもう少しかかるのかな?」

「うん、もう今日の便は全便欠航が決まったらしくて、明日、復旧次第帰って来るってさ」

「へっ」

今日は、帰って……こない?

「そっか、じゃあ私……また明日、出直すね。お茶とお菓子、ご馳走さまでした」

「うん、折角来てくれたのに、ゴメン。
あ、いいっスよ、カップとかは片付けておくから」

本当なら、もう少し一緒に居られた筈なのに、……引き止めては、くれないんだ。

そんなワガママな自分が顔を出す。

「ありがとう、お願いします」

それでも、ここに来ると決まってから緊張で固まっていた身体の力が抜けた。

ほぅ、とため息をついて、鞄を手に取る。

「またね、涼太」

「みわ、送るっスよ」

足早に階段を下りると、背後からそう言って小走りで追ってくる気配。



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