第73章 散華
涼太の部屋に入ると、部屋の半分がベッドで埋まっていた。
そうだ、以前のベッドは今、寮で彼が使っている筈。
この大きなベッドは、涼太が1人暮らししていた頃に買った……
……僅かな期間だったけど、何度もこのベッドで抱かれた事を思い出し、顔に熱が集まるのを感じる。
残る家具は、小さなガラステーブルに本棚、テレビ台だけだ。
「あれ、ここにあった小さめのソファは?」
テレビの前に置いてあった筈の、ネイビーのソファがなくなっている。
「あー、ベッド置くと場所がなくてさ、姉ちゃんが使うってんで、今は下の姉ちゃんの部屋にあるんスよ」
「そ、そうなんだ」
お姉さん。
ああ、黄瀬家は本当に緊張する……。
今まで泊まらせて貰った事は2回。
それ以外でも、たまに、本当にたまにお邪魔する事はあるけれど、いつもお姉さん達はお仕事で不在だし……。
ドキドキして心臓が飛び出しそうだ。
「そこ、空いてるとこ座って」
「あ、うん」
温かい黄瀬家。
いつも、本当の家族みたいに迎えてくれて、嬉しい。
明るくて、優しくて、自由で。
あんな素晴らしいご家族の中で育ったんだもん、涼太の人柄の良さは納得。
家族、かあ……。
「みわ、何やる?」
涼太がテレビ台の下の扉を開けると、ずらりと並んでいるゲームソフトたち。
ゲームなんて全く詳しくないから……と思いつつも、一応端からタイトルを確認していくと、見つけたひとつのゲーム。
「あ、私これ、あきとやったことある!」
全世界でも人気のタイトルらしく、映画化とかもされているんだとか。
ゾンビ? のような敵をひたすら撃つゲームで、謎解き要素とかやり込み要素が沢山あるんだって。
「あきサンと? 珍しいっスね」
「彼が好きなんだって言ってた……」
彼が泊まりに来ると、何時間もやっちゃうくらい、ハマってるらしい。
確かに、最初は操作に慣れなかったけど、上手くできた時の達成感が好き。
「みわにしては意外なチョイスっスけど、んじゃこれやろっか」
「うん!」