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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第73章 散華


そう言えば、以前もこんな事があったな。

あれは……なんの時だっけ。
そうそう、姉ちゃんの仕事の話をしていた時だ。

姉ちゃんの職種を聞かれて、

「上の姉ちゃんは、なんか病院行ってるみたいっスよ? 看護師じゃないっスかね?」

とか

「下の姉ちゃんは、なんか商社みたいなそーゆーとこに行ってるっぽい」

とかテキトーな事を言ったおかげで、みわにだいぶ呆れられた。

上の2人が社会人になってから、オレもバスケだなんだが忙しく、なかなか家族でゆっくり話すという機会がない。

だから仕方ないんだと言い訳する事にした。




リビングに入ると、ヒヤリと冷えた空気が頬を打つ。

暫く留守にしていたせいで、部屋は冷え切っている。

真っ先にエアコンの電源を入れた。

一軒家って、やっぱり寒い気がする。
マンションに住んでた時はそんなに感じなかったのに……。

「みわ、なんかあったかいものでも飲もうか」

……

返事がない。

振り向くと、固まった表情でオレをじっと見つめているみわがいた。

「みわ?」

「あっ、ハイ! なんでしょうか!!」

全身から迸る緊張感がハンパなくて、思わず笑った。

「ぷっ、そんなキンチョーしないでってば。
そもそも、ウチ来るのだって初めてじゃないっスよね?」

「あ、うん、はい、そうですよね」

まるで、壊れたロボットだ。
手足同時に出して歩いているその細い肩を抱こうとして……思いとどまった。

ダメだ。
今日はもう、触れちゃダメだ。
絶対に、止まんない。

「皆帰って来たら夕飯だろうからさ、部屋でゲームでもしとく?」

みわには触れずに踵を返し、食器棚からカップを2つ手にした。

「う、うん、そうだすね」

全くもって解けないそのキンチョーっぷりに再び大笑いし、温かい紅茶を注いだカップで両手を制御したまま、オレの部屋へ向かった。


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