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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第72章 悋気


「……ごめん。オレ、また言ってるっスわ」

高尾クンとあんな話をしたばかりなのに、またオレは妬いてるのか。

見るからに皆と仲良くなっているみわ。
それは、喜ばしい事じゃないか。

ほんっと、どーしよーもねー……



「嬉し、い……」

「え……なに? みわ」

今、みわはなんて言った?

あっという間に口の中の水分がなくなって、やっと出た声は掠れていた。

「嬉しい。もっと、妬いて」

目も合わさずそう言った彼女の耳は、真っ赤に染まっている。

その可愛らしい横顔に、欲望の塊がズキリと疼く。

「……やめてよ、家までまだかかるんだから」

……いや、家には姉ちゃん達がいる。

夜はまた、みわは姉ちゃんに拉致られるだろうし、とてもじゃないけどイチャつけるわけもなく。

はあ、生殺しっスか……。

「ご、ごめんなさい」

あ、また謝った。

……オレには、謝らなくていいのに。

「謝る事じゃないっスよ。ここじゃ抱きしめらんないって思っただけ」

「……うん」


車窓には緑深い渓谷が映り、窓を開けなくても静かな車内にまで清流の音が届きそうだ。

思いがけぬ旅行で、また大切なひととの絆が深まった……気がするのは気のせいだろうか。

暫く、2人とも無言で手を絡み合わせていた。
冷え性のはずのみわの手は、とても温かかった。












「……はい、……でございます。

征十郎様。はい。

ええ、おふたりともぐっすりとお休みになっています。

駅にはもう間も無く……はい。

黄瀬様のご実家まで……はい、承知致しました」




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