第72章 悋気
「ほら、同性同士の恋愛ってどう思うか、聞いたじゃない……!」
その一言で、ようやく思い出した。
ああ、そのことか。
確かにあん時、その話をしたな。
……Sariと会ったから。
彼女は、両性愛者だったはずだ。
そして、みわのような純粋な子は、きっと彼女も好きなタイプだと思ったから。
それをまさか、そんな風に勘違いしてたなんて。
「違うっスよみわ、あん時は緑間っち達の事じゃなくて……」
そこまで言って、ふと気づく。
……ここで言っていいものか?
緑間っち達が彼女と関わり合いにならないのは確実だとしても、Sariは一応芸能人だ。
気に食わないヒトではあるが、だからと言ってなんでもかんでも垂れ流しにしていいという事はないだろう。
「んー、理由は後でゆっくり話すとして、とにかくこの2人の事じゃないんスよ」
みわの顔が青ざめている。
「……え……カン、違い?」
「神崎ちゃん、ずっと俺たちの事そーゆー目で見てたワケ!? 面白すぎんでしょ!」
「ご、ごめんなさい。ホントに、ごめんなさい……」
「いいじゃないスか。緑間っちと高尾クンって、四六時中一緒にいて、マジでコイビト同士みたいだし」
「……黄瀬」
軽いノリで言ったのだが、緑間っちの鋭い眼光が突き刺さる。
「俺は真ちゃんの相棒なの!
コイビトは別れたらそれでお終いだけど、友情って一生モンだろ?」
……別れたら、お終い……か……。
そうだよな……。
「別れたら……そう、ですよね……」
オレと全く同じ事を考えていたのか、みわが同様のテンションで返答した。
「あ、いやいやそういう意味じゃなくて!
とにかく俺が言いたいのは、黄瀬クンを救えるのは、神崎ちゃんだけだってこと」
オレを……救う?