第72章 悋気
「高尾、まだ言っているのか。しつこい奴なのだよ」
緑間っちはメガネを直しながら、呆れ顔。
「真ちゃんがさ、言ってくれたんだよ。
やっぱり、オマエのパスが一番しっくり手に馴染むって。
その一言でさ、汚ねえ感情なんて、どっかいったわ」
あの緑間っちが。
意外すぎる。
そうか……やっぱいいもんスね、仲間って。
と思っていたら……
「……あの、緑間さんと高尾さんは、いつから付き合ってるんですか……?」
と、みわが突然小さい声で聞くもんだから、全員でお茶を吹き出した。
「神崎、神崎さん、な、な、一体何を言っているのだよ!」
「ブフォ!! 神崎ちゃん、それって素? 初めて聞かれたんだけど!」
「みわ、どうしちゃったんスか!?」
オレたちの質問責めに、戸惑った様子のみわ。
「ごめんなさい、非常識なのは分かっているんですけど、どうしても気になって……」
「神崎ちゃん、謝るポイントちげーわ! 誰がンな事言ってんの?」
どうしたんスか、みわ。
誰かに入れ知恵されちゃった?
「あの、涼太が……」
え?
オレ?
「……黄瀬貴様、どういうつもりなのだよ」
「黄瀬クン、勘弁してよー」
2人から向けられる非難の目。
「は、え!? みわ、オレ!?」
どゆこと!?
全く心当たり、ないんスけど!?
「え、言ってたよね? 年末にお蕎麦、食べに行った時……」
「……何、言ったっけ? オレ」
1年の時の年末か……確か店の外で並んでたら、緑間っち達を見つけたんスよね。
なんか2人について、話したか……?
あ、店の中で2人と話したよな?
あの時か?
……何話したっけ?
やべ、全然覚えてない。