第72章 悋気
「……青峰さん……行っちゃった」
さつきちゃんとふたりきりにしたくて、無理矢理あんな事言ったけど……やっぱりダメか。
どうしよう……早く、仲直りさせてあげたい。
2人の気持ち、通じて欲しい。
どうしたら……
「……ね、みわ」
「わっ、なに、涼太」
突然顔を覗き込まれて、驚いて身を引いた途端に、ベッドのヘッドボードに頭をぶつけた。
「いった……」
「はは、何してんスか、大丈夫?」
後頭部に響いた衝撃に、若干目の前に星を飛ばしながら涼太に目をやると、彼はおひさまのような微笑みで、私の浴衣の胸元を掴んでいる。
「……なに? 涼太?」
「スルってこと、だよね?」
「……え?」
する?
って?
「あんなにすぐ終わるすぐ終わる言ってたけどさ……そうカンタンには終わらせないっスよ?」
さっき、慌てて乱暴に閉めた浴衣の合わせから、侵入してくる手。
「え……すぐ終わるって、何が?」
「みわが言ったんでしょ」
ちょっと、涼太が何を言ってるのか分からない。
「……なんで、心当たりがないような顔してんスか」
「何……ごめん、よく分からないんだけど」
「みわが青峰っちに、さっさとヤるから部屋に行っとけって言ったんスよ!」
……へ!?
「ヤ……!? 言ってない! そんなつもりで言ってないよ!」
「アレにそれ以外の意味があったら逆にビックリっスわ!」
普段、どちらかというとボケ担当? の涼太に、ツッコミを入れられてる……。
「だ、だって青峰さんが、さつきちゃ」
「もーいいから、黙って……」
「あっ」
言葉通り、あっという間にゼロ距離になる2人の間。
涼太の唇が、頬を撫でる。
「カワイイ声しか聞きたくないっス、今は」
違うの、違うの。
したくないわけじゃないの。
そうじゃなくて!!
「待ってってば、ちょっと!」