第72章 悋気
ご友人の目の前で、痴態を曝した事がある方、どの位いらっしゃいますか?
そんな無意味な街角アンケートをしたくなる。
もう、頭は真っ白を通り越して真っ黒。
いや、落ち着いて。
何を言っているの。
そんな私に構わず、相変わらず2人はいつもの調子でギャアギャアと言い合いをしている。
ビックリするほどのメンタルの強さだ。
「大体、なんで青峰っち戻って来たんスか!」
「いや、だからオレの部屋だっつーの。
チェックアウトまで昼寝しに来たんだよ」
「ん? 皆結局、何時までいるんスか?」
「紫原とテツは、なんか実家で用があるってさっき先に帰ってった。さつきが、神崎を待つって言うからオレも付き合わされてんだよ」
さつきちゃん。
その名前で、ぼんやりしていた頭が覚醒する。
そうだ、さつきちゃん!
青峰さんに謝りたいと言っていた彼女の姿が目に浮かぶ。
「あ、青峰さんっ!!」
「ん?」
「あの、あの、すぐ終わりますんで、私の部屋で待っていてくれませんか!?
鍵、その、鏡の前にあります!」
なんかもう、自分でも何言ってるか分からないけど、とにかく思い浮かんだ言葉をぶつけるしかない。
「……いや、オレ昼寝してーんだけど」
「あの、ですから、私の部屋使って下さい!
どうせ、ベッドまだ使っていないので!」
「ベッドはいいけどよ、神崎の部屋なら、さつきがいんだろーが」
勿論、百も承知です。
だから、すすめてるんです。
「ホントに! すぐ! すぐ!
終わりますから! お願いします!」
「何ムキになってんだよ、神崎」
お願い、さつきちゃんの話を、聞いて……!
「青峰っち、オレもこのまんまじゃ終われないんスけど」
思わぬ涼太からの加勢で、場が静まり返る。
「……んだよ、いーよじゃあ、赤司に空き部屋あるか確認すっから」
そう言って、青峰さんは部屋を出て行ってしまった。
……失敗、しちゃった?