第18章 夏合宿 ー2日目ー
しばらくすると、笠松センパイが交代に来てくれた。
「今寝付いたとこっス。オレ、すぐ食べてくるんで!」
「おー……まあのんびりしてこいよ」
そうは言われたものの、走って食堂に向かう。
食堂ではまだ何人かは食事をしていて、みわっちの事を知らないのか、オレが突然入ってきて驚いていた。
「なに黄瀬、今からメシ? おせーじゃん」
2年生だ。レギュラー以外のメンバーだと、普段はあまり喋らないけど。
「ちょっと、みわ……マネージャーが体調崩してて、色々やってたんで」
「え、大丈夫なのかよ?」
「ハイ、今落ち着いて寝てるとこだから、大丈夫だと思うっス」
「黄瀬も災難だったな。マネージャーが倒れてたんじゃ、話になんねーだろ」
「……は?」
「空回りしてマネージャーが倒れたら、一番メーワクだろって話だよなあ」
「……アンタ、何言ってんの?」
「だってそうじゃん、バスケやってんのはオレたちなのにマネージャーが倒れるとか……」
一瞬、聞き間違いかと思ったが、残念ながら現実らしい。
同じチームなのに、こんな事しか言えない奴がいるのか。
「……オレたちがバスケに集中できるのは誰のおかげだと思ってんスか」
こんなの相手にするだけ時間の無駄だ。
すぐにみわっちの所に戻らなきゃいけない。
でも、その発言を見逃すほどオトナにもなれない。
彼女がどれだけバスケ部の事を想い、皆を想っているのかを、オレは知っているから。
深呼吸1つして、睨みつけながら言った。
「もう一度マネージャーを軽視した発言をしてみろ、ぜってー許さねーからな」
もうそれ以上、誰も何も言わなかった。
物凄く腹立たしかったけど、これだけの数の部員がいたら、意識が統一されてないのは仕方ないのかもしれない。
帝光中だって、似たようなものだったじゃないか。
そう言い聞かせてみたものの、全く治まらないイライラを抱えながら、食事を取った。
スマートフォンがメール受信を知らせていたが、とても見る気にはなれなかった。