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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第72章 悋気




「ん……」


少し掠れたその呻きに似たような声に、意識が戻ってくる。

いけない、またちょっとボーッとしてしまってた。

ベッドの涼太に目を向けると、緩く寝返りを打ったようで、布団が乱れている。


あの時、さつきちゃんとの誤解も解けて、良かった。
青峰さんと何があったかも聞けたし。

でも……




さつきちゃんが涼太と寄り添うようにして歩いていたあの姿。

あれについては、結局最後まで言えずじまいだった。

……ううん、何かを疑ってた、とかじゃない。

さつきちゃんが好きなのは青峰さんって、ハッキリ聞けたし。

涼太を疑ってるわけでも、ない。


ただ、私がどう頑張っても入っていけない、帝光中の絆……私の知らない、皆。

そんな風に感じてしまう自分がとてつもなく小さな人間に思えて、嫌になる。

どこまでも過去に縛られる人間なのかと、心底嫌気がさした。



軽く頭を左右に振りながらベッド際に戻り、はみ出している長い足に布団をかけ直す。

もそもそと、布団が蠢いた。



「……みわ?」

低く、甘い声。
うっすら開いた切れ長の瞳と、目が合った。

「ごめんなさい、起こしちゃったね」

「いや……ちょうど、夢の覚め際だったっス」

「お水、飲む?」

「うん」

目が覚めたら飲めるようにと、ベッドサイドのテーブルにミネラルウォーターのペットボトルを用意しておいた。

「待ってね、今開け……あっ」

ペットボトルを掴もうと伸ばした手が、同じく伸ばされた涼太の手とぶつかり、ボトルは床に落ちた。

「ごめんね、落ち」

落ちたボトルを拾おうとした私の身体を、温かいものがふわりと包んだ。


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