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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第72章 悋気


「ごめんなさい、嘘……」

さつきちゃんは足を止めて、小さな声で呟くようにして話しだした。

「見た、っていうとちょっと違うの。
2人がハッキリ見えたのは、周りの電気が点いてからだから……ただその時の状況をみて、そうなんだろうなって思っただけ」

ふと思い出した。
確かにあの時は辺りが真っ暗で、その場に居た私は足元すら見えなかった。

それを、さつきちゃんが居た部屋の窓から見えている訳がないんだ。

「それも、違うかな……そうじゃない筈だって、信じたかっただけかも……」

さつきちゃんは、自分で自分を納得させようと、必死で考えたんだ。

無理矢理にでも、納得するように。
信じようって。

それは、どれほど胸が痛い事か、私は、よく知ってる。

「ごめんね、さつきちゃん……嫌なとこ、見せて。さつきちゃんが言った通りだよ。青峰さんに助けて貰っただけ」

さつきちゃんは安心したように、深く息を吐いた。

「みわちゃんが、きーちゃんの事だけを好きなのは分かってるから。
そんな事、ある筈ないって。
でも……もし、大ちゃんがみわちゃんに片思いしてたら、って不安になって」


え?

まさかの方向転換に、目が点になる。

「大ちゃんは……みわちゃんの事、認めてるし……わたしは、料理もマトモに出来ないし」

さつきちゃんは一体、何を言っているのか。

青峰さんは誰よりもさつきちゃんの事を評価しているというのに。

そして、あんな表情をするほど、さつきちゃんの事が好きだっていうのに。



「さつきちゃん、青峰さんは」

……ここまで言って、思いとどまった。
青峰さんの気持ちは、青峰さんの口から聞かないと。

そうじゃないと、意味がない。

「……青峰さんがああやってさつきちゃんに言うのは、その……気になる子ほどいじめたくなる……っていう心理なんじゃないかな?」

「そうなの、かな……」

「これだけは断言できる。
青峰さんが私の事を好きとか、絶対ないから。
これは、絶対」

「……」

「さつきちゃんは、青峰さんに言われた事だけを信じればいいんだよ」


その言葉を聞くなり、さつきちゃんはクスクスと笑いだした。



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