第72章 悋気
「涼太、もう少し寝た方がいいよ」
渋る涼太を寝つかせて、私はベッドサイドで手帳を開いた。
年末年始は、目立ったイベントはない。
帰ったら、しばらくのんびりかな……。
はあ……なんだか、濃い1泊2日だった。
昨日のストバスから昨夜の温泉での出来事までを走馬灯のように頭の中で再生していると、頬に熱が集まるのが分かる。
なんて、大胆な事を言ってしまったんだろう。
涼太を、あんな風に誘って……。
避妊せずに……だなんて。
理性が溶けかけた頭で、なんてことをしてしまったんだろう。
結局、未遂で終わったのも、少し残念に思っている自分がいる。
……今日は所謂『危険日』じゃないのは分かっているけれど、それにしたって……。
温泉のせいか頬が紅潮し、あり得ないほどの色気を迸らせている涼太を思い出す。
ベッドの中で高校生らしい安らかな寝顔をしている彼と見比べて、ますます顔が熱くなった。
何気なく立ち上がり、窓際まで歩く。
目が痛くなるほどの朝日に目を細めながら窓の外を眺めると……旅館の裏側が見える。
昨日……さつきちゃんは、部屋の窓から私と青峰さんの一件を見てしまったんだって。
誤解されたままじゃなくて、
あの時、話が出来て良かった……。