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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第72章 悋気


みわ。



好きだ。




みわ。






……みわ……






「……あ、れ」


右手を湯を掻くように動かしても、その手は虚しく空を切っていく。

温泉じゃ、ない?

オレは目を閉じていたのか?
目の前には、見慣れない天井。

え?
夢オチ……じゃないっスよね?




「やっと気が付いたか。全く、手間ばかりかける奴なのだよ」

視界の右隅に、緑色の髪。
……緑間っ、ち?



……あれ、オレ……
温泉で、みわと抱き合って、キスして……


これからいよいよってとこで……




それで?



「お前が逆上せて倒れたと、神崎さんが部屋に駆け込んできたのだよ」


……は?



「オレ……のぼせた?」


……確かに、身体がアツくて……
目の前がぼんやりしてきて……
それで……


「……マジ、っスか」




「あっ、涼太! 目、覚めた?」

声のする方に目をやると、小さな洗面器を持ったみわの姿。

旅館の浴衣姿に、髪の毛はアップにしている。

どう見ても、風呂上がりだ。



「大丈夫? 気分は?」

言われてみれば、纏わりつくような吐き気を感じる。

「んー……ちょっと、気持ち悪いっスかね」

「ごめんね。まさか逆上せちゃうなんて」

先ほどまで絡め合っていた細い腕は水色がかったタオルを絞り、オレの額に置いた。

サイアクだ。

「オレ、舞い上がりすぎたんスね」

「全くだ。とことん迷惑な奴なのだよ」

……どうやって救助されたかは聞かないでおこう、恥の上塗りだ。


心なしか、カーテンから僅かに覗く窓の外が明るい気がする。

「……え、今……何時なんスか?」

「今? 8時だよ。涼太の朝食は待って貰ってるから安心して」


8時。
2人で温泉に入ってたのも、それほど早い時間じゃなかったけど……

「赤司さん、チェックアウトは午後でもいいって言ってくれてるから、ゆっくり帰ろう?」


なんかもう、オレ色々台無しにしたのか。

そう気付き、吐きそうになりながらガックリと肩を落とした。



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