第72章 悋気
……遂に、言った。
2人の情事を見てたこと。
頭が痛い。
ドクドクと脈打って、血管を突き破って血が噴き出しそうだ。
みわは、なんて言う?
ごまかす? 弁解する?
「涼太……? キスって、誰と、誰が?」
……ごまかす、か。
ここまで隠してたんだから、言ってはくれないかも、と予想してたけど……。
みわって、平然な顔してあーゆーこと出来ちゃうんスか……?
まだ、素直に言ってもらえたらマシだったのに。
「……言わせたいの? みわと、青峰っちっスよ」
あの光景が、今でもハッキリと網膜に焼き付いている。
求め合うように抱き合う2人。
顔を重ねたシルエット。
脳内へ侵食して、夢にまで出てきそうだ。
「ええっ!?
青峰さんと私が、どうしてキスするの!?」
目を丸くしてみわは慄いている。
まるで何も知らないといったその可愛らしい表情に、さすがのオレもカチンときた。
「そんなのオレが聞きたいっスよ!
何堂々と浮気してんだよ!
抱き合ってキスしてさ、オレが気付かないとでも思ったんスか!」
みわは言葉を失っている。
オレの勢いに圧倒されているようだ。
「抱き合って……っていうのは……転びそうになって、それで助けて貰ったの」
転びそうに?
確かに2人が抱き合う瞬間は、オレは窓に当たる雨粒に目を奪われていて見ていなかったから、真偽は不明だ……けど……とても、嘘をついているようには見えない。
「……それが本当だとしてもさ、キスまでする必要があったんスか?」
「だから、キスって……?
あ……もしかして、私が青峰さんのほっぺたに歯をぶつけた事……?」
…………
「……歯?」
ほっぺた?
歯?
「私、暗がりで気付かなくて……段差を踏み外しちゃってね、青峰さんが引っ張ってくれたんだけど……」
え?
なに、この流れ?
「勢いがついて、そのまま顔に激突しちゃったの……青峰さんのほっぺたにも歯型がクッキリで……悪い事しちゃった……」
オレ
また勘違いしたってコトっスか?