第72章 悋気
「ん……も、たって、られない……」
「みわ」
熱い舌が耳朶に触れ、雨音とは異なるピチャリという音に支配される。
「うぅ……ぁ」
その間も、敏感な尖りを弄り続ける指は休むことはない。
「みわ、もっと」
「りょうた……も、つらい」
冷気に満たされた窓際で、片腕に支えられながらひたすらに一点だけを責められ、それ以上に進むこともなく、終わりが見えない。
どうして、意地悪ばっかりするの……
涼太、もう、私のこと……
「みわ……オレのコト、嫌になった?」
「……ふ、ぇ?」
……まさに今、涼太に嫌われてしまったのではないかと心配になった矢先のこと。
私が涼太のこと嫌いに?
なるわけない。
こんなに、こんなに好きなのに……
「……図星、っスか?」
え……
「ち、ちが」
「みわ」
耳もとで囁かれる自分の名前は、その甘い声の効果でひどく特別なものに感じて。
「みわ」
好き……
「まって、あの……あッ!?」
その想いを言葉に乗せようとした途端、陰核を擦り続けていた指が、突然割れ目をなぞった。
「すげ……濡れてる」
あれだけいかされてしまったんだから、当たり前だよ……。
じんじんとした痺れが下半身全体に広がっているみたい。
……欲しい、中に……
既に散々弄られてもう解放されたい筈なのに、そんな欲望が頭をもたげていた。
指は、今度はぬるぬると表面を擦るだけで、中に入ってくる気配はない。
「りょうた……おねがい」
理性はもう殆ど残っていない。
自分から誘うように腰を揺らしてしまっているのにも気付いている。
でも、この状態が辛くて、辛くて……。
「ダメっスよ、これはお仕置きなんスから」
「お……し、おき?」
「オレ以外の男を見た、お仕置き」
そんな……
涼太以外なんて、見てないよ。
私が好きなのは、涼太だけだもん。
「みてな……あぁ!」
再びグリリと敏感な核を押し込まれ、不意に迎えた絶頂とともに、意識は泥に沈むかのように深みへと落ちていった。