第72章 悋気
「あ……ァ」
喉が……渇く。
もう殆ど出ない声の代わりに漏れる息が、窓ガラスを曇らせていく。
あれから、どれほどの時間が経っただろう。
一体、何回いってしまったのだろう。
口内を蹂躙し続ける指を噛んで抵抗しようとしても、力が入らない。
再び何回目かの絶頂を迎え、ついに力の全く入らなくなった膝も、彼の逞しい腕に支えられて崩折れることはなかった。
「ダイジョーブ? みわ」
いつもの、気遣うような"大丈夫?"ではない。
まだ、頑張れるでしょ?
そう言われてる気がして。
もう、無理……
「ひ、ぁ……も、む、り……」
必死で絞り出した懇願は、窓ガラスに新たな曇りを生み出しただけで虚空に消えていった。
怖いくらいの迫力とは裏腹に指遣いは優しく、止まることはない。
最初の1度以降は、ゆっくりと快感を味わわされ、じっくりと上り詰めるようで……。
「……ぁ、……」
絶え間なく訪れる絶望的なまでの快感に、意識が遠くなってきた。
「ダーメ……ほら、みわ」
「っあ、う!」
優しく陰核を擦り続けていた指が突然強く抓り出し、その痛みを伴った快感に、靄のかかった意識が覚醒する。
先ほど彼は、気絶するまで許さないと言っていたけれど……
気絶することも許して貰えない。
「りょうた、ごめ……ごめ……なさ……」
「ごめんなさい? それは何に対して?」
狂気のような愛撫からとにかく解放されたくて。
「みわ、オレは別に謝って欲しいわけじゃないんスよ」
「ぁ……ぁ……や、……ん……」
じゃあ、どうしたらいいの?
涼太、怒ってるの?
「りょ、う……なん、あッ、あ」
「……こんなに腫らして……キモチイイ?」
弄られ続けた蕾はこれ以上にないほど敏感になっている。
「……や……」
曇った窓についた両手が、不規則な円を描き出していく。
先ほど降り出した雨は、嬌声を掻き消すかのように強くなっていた。