第72章 悋気
答えあぐねていると、私を抱き締めている涼太の腕に力が入り、私の身体はやすやすと抱き上げられた。
「……っ!?」
突然の出来事に驚いていると、そのまま室内を歩き、窓際に下ろされた事に気が付く。
顔面スレスレにある窓ガラスに、2人の顔が映っている。
「ねえ、みわ」
ガラスに映る琥珀色のはずの瞳は、無機質なモノクロに見えて。
その冷たい迫力は、まるで別人みたいだ。
その姿に目を奪われていると、長い指が首筋を這い上がり、唇を割って侵入してきた。
「ふぁ……!?」
指は口内を自由に動き回り、少しずつ、でも確実に快感を与えてくる。
質問されても、こんな状態じゃ答えられない。
「ぁ……は、あぅ、あの」
なんとか言葉を紡ごうとしても、動く指に阻まれて正しい音にならない。
「いーっスよ、もう喋んなくて」
涼太は何もなかったようにそう言い放つと、私のパンツに手をかけた。
彼に選んで貰ったスキニーパンツはあっという間にホックを解放され、下着の中へ指が入ろうとする気配を感じる。
こんな、こんなところで一体何を!?
もし、青峰さんが戻ってきたら……!
「ぅ……りょう、っあぅ!」
抵抗を試みた途端、下着の中を探る指が、敏感な蕾を擦り始めた。
口内を愛撫するように動く指も、緩む事がない。
まるで、脳内をかき混ぜられているかのような快感。
理性が、少しずつ溶け出していく気配がする。
「やっ、あぁ、やめ」
「みわはまだ、分かってないみたいだからさ……」
妖艶で、甘くて、でも容赦のない声。
「みわは誰のものか、身体に聞くことにするよ」
普段の柔らかい口調はすっかり息を潜め、獰猛な獣の様な雰囲気を醸している。
その言葉に合わせるように、指の動きが激しくなった。
「ひぁ、やあ、あっ、……!」
彼の巧みな指の動きに、情けないほどあっという間に絶頂を迎えた。
膝がガクガクと震える。
「っは、はぁ、はぁ……ッ」
強烈な快感に、立っていられない。
冷え切った窓ガラスに手をつき、なんとか体重を支える。
「や、りょうた、も、ゆるして」
隣の部屋には皆がいるのに。
もう、やめて。
「……だめっスよ。気絶するまで許さない」
いつもの優しい声は、そう言い放った。