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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第72章 悋気


旅館の浴衣、こんな柄だったんだ……無造作なストライプ模様なのかと思っていたら、その線は細かい星々で描かれている。

綺麗な、流星柄だ。

何度目だろう、こうして彼の胸に顔をうずめるのは。

素肌を覆った薄い浴衣の上から、浅く上下する胸の奥にある、心臓の鼓動を感じる。

幾度となく、熱を交わし合った。

この熱に纏われるだけで、こんなにも落ち着かなくて、これ以上になく落ち着く。

でも……

何、どうしたの……?


「黒子っち」

その温度の低い声に驚いてびくりと肩を震わせると、宥めるように、私を包む腕に力が入る。

「なんですか?」

何、何を言う気……?

涼太の表情を確認しようと顔を上げると、大きな手が私の両耳を覆った。

涼太が、口を動かしている。
その顔は真剣そのもの。

その声は私に届かない。
その代わりに、耳に入ってくるのはゴー、という音。

これ、筋肉が収縮する音、なんだっけ……

そんな事をぼんやりと考えているうちに、外界の音を遮断していた手が離される。

なに?
何を話していたの?

「みわ、いこ」

今度は肩をグッと掴まれ、今来た方向へ向き直った。

ちょっと、ちょっと待って。
なに、急に?

こんないきなり、黒子くんに申し訳ないじゃない。

「く、黒子くん!」

辛うじて振り返ると、彼はまた、いつものように優しく微笑んでいた。

「大丈夫ですよ、みわさん」

「みわ」

少し苛立ったように名前を呼ばれ、視界を遮るように包まれる。

……涼太、何か……怒ってる……?

こうなったら、抵抗は無駄だ。

「ごめんなさい、黒子くん!
あと、よろしくお願いします!」

黒子くんの姿はもう見えないけれど、それだけ伝えると、強引な腕に身を任せた。


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