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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第72章 悋気





「……さっき、赤司君たちとそんな事を話してたんですか」

「うん、そうなんだ……」

人気のない廊下を、2つの影が通り過ぎていく。

私の隣を歩くのは……黒子くん。

初めて会った時よりも、大人っぽくなった気がするのは、私服のせいかな?

こうして、ふたりきりで話すのはいつぶりだろう。

「なんだか、楽しいな。
こんなに大人数で年越しパーティーみたいなこと、したことないから」

最初にキセキの皆と会った時のように、顔と名前が一致する程度ではなく、友人、と呼んでいい距離にまで近づけている気がする。

……のだけれど、皆はどう思ってるんだろう。

「そうですね、僕も初めてです」

「お蕎麦も、すごく美味しかったね」

そんな他愛もない事を話しながら歩いていると、カーペットを強く踏みしめるような音が後ろから聞こえてくる。

この歩幅、テンポは……


「みわ!!」


浴衣姿で廊下を走る涼太の姿が見える。
翻る裾から覗く足は、1年生の頃よりずっと逞しくなって、怪我も少なくなった。

体幹のブレがない、キレイな走り方……。

彼がそこに立っているだけで、ただのカーペットが、映画祭のレッドカーペットのように見えてしまうのだから不思議だ。

でも、その表情は強張っていて……。

「……どうしたの? 涼太」

「何の用ですか、黄瀬君?」

さすがに、涼太は息ひとつ切れていない。
歯を食いしばりながら耐え抜いたトレーニングを思い出す。

弱音ひとつ吐かず、お得意の軽口のひとつも叩かずに、黙々と自らを追い詰め、鍛える姿はただただ、美しかった。

このひとの姿を見るだけで、こんなにも沢山の想いで溢れてしまう。

「……悪いけど、黒子っちにみわは渡さねぇから」

……え?

大きな手で腕を掴まれた……と思ったら、次の瞬間には視界が一色に染まっていた。




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