第18章 夏合宿 ー1日目ー
みわっちのその行動に目を奪われ、オレは感動し、尊敬していた。
……しかし同時に、今すぐやめて欲しいとも思ってしまった。
オレだけのみわっち。
そんな風に皆に優しくしないで欲しい……。
……何言ってるんだ、オレ。
こんなの、頑張ってるみわっちに失礼だろ。
胸の中にどす黒いシミのようなものが広がっていく。
「神崎、俺はまだやる事があるから椅子でやって貰っていいか?」
笠松センパイが、窓際に置いてある椅子に移動する。
「ふふっ笠松先輩、寝ないように耐えるの、今日はやらないんですね」
「今日は無理だ絶対寝る。やる前からオマエの勝ちだよ」
……女子が物凄く苦手な笠松センパイも、みわっちとはこの感じで話してる。
確かに普段も練習後にマッサージされると、気づいたら寝てるということがよくある。
だからってちょっと、仲良すぎじゃないスか?
……オレ、センパイ相手になんでこんなこと考えてるんだろ。
「センパイが寝ないようにするなら、オレもそうするっス!」
「バーカ、オマエはさっさと寝ろよ。明日も朝から地獄の練習メニューだぞ」
「オレだけ免除されてる練習もあるっスもん……」
「まだ本調子じゃないからでしょ。黄瀬くん、無理しちゃだめだからね」
笠松センパイをマッサージするみわっち。
ただそれだけなのに、直視できない。
なんだこの気持ち。
「オレもまだ寝ないっスよ!」
オレも、笠松センパイの向かい側の椅子に座った。
センパイのマッサージが終わると、ノートを持ってみわっちがオレの前に来る。
「ハイハイ黄瀬くん、始めますよ」
いつも通りのみわっち。
この間キスを嫌がられてから、ロクに会話もしてなかった。
みわっちの手が、固くなった筋肉をほぐすたびに……意識が…………。
「コラ黄瀬、寝るなら布団行けよ、オマエ重いんだから!」
「ね、寝てないっスよ!」
「思いっきりヨダレ垂らしてたろ!」
みわっちもクスクス笑ってる。
なんスか二人して……。
「絶対……寝ないっスから……」
目が覚めたと思ったのに、すぐに目が開かなくなる。
思っていたよりも相当疲れてるみたいだ。身体が重い。
…………。